若年層の育成方法~若手社員を失わないために~

「新卒の3割が3年以内に退職している。」
「最近の若い社員はこらえ性がなく、すぐ辞めてしまう。」

ここ数年でこのような言葉をよく聞くようになりました。
しかし、最近の若者は本当にこらえ性がないのでしょうか。
ある建材メーカーであった、次のような話を聞いて皆さんはどう感じますか?

入社2年目のAさんが客先からの仕様変更のメールをB課長にメールで送りました。
しかし、AさんはB課長にメール送付のリマインド(メールを送ったので確認しておいてください。という一言)を行いませんでした。
B課長がそのリマインドがなかったことについてAさんに注意すると、「申し訳ありませんでした」と謝ったものの、なんとも腑に落ちていない様子でした。

B課長の本音を伺うと、若い社員は丁寧なコミュニケーションが取れない。メールを一方的に送ってフォローしないのは失礼だ。
もし、お客さんとのやり取りであれば「メール見てなかったのですか?」と相手のせいにできるわけがない。というものでした。

一方、Aさんの本音は、確実に一度で伝わり、履歴も残るからメールがいいはず。なのに、いちいち一声かけるなら、メールじゃなくていいのでは。
それに、B課長は席空きのことも多く、報告遅れたら、「遅い」って怒るし、そもそも、見落とすことを前提にするのはどうなの?自分がメールを見落とす!ってそんなに偉そうに言うことでもないし。
仕事のメールなんだから見落としちゃダメでしょ。僕がB課長のメール見落としてたら絶対怒るじゃないですか。というものです。

ここでは本音を伺ったため、Aさんが少し生意気に聞えるかもしれませんが、Aさん、B課長どちらも主張は正しいように思いませんか?
現代のように、1日に何十件とメールが来る時代。B課長の世代には鬱陶しく、大事なメールを見落とさないかという恐怖もあるかと思います。
しかし、Aさんの世代は、スマホを片手にこれが当たり前の時代で育ち、メールを見るのが当たり前、見落としたほうが悪いという世代なのです。
このような世代間ギャップは他にもたくさんあり、これらが『こらえ性』という言葉で浮き彫りになっているように感じます。

今回は、そんなよくわからない最近の若者の考え方。それを踏まえた上での若手の育て方についてご紹介させていただきたいと思います。

<目 次>
1.若年層の特徴
1-1.今の若者が育った環境
1-2.マズローの5段階説
1-3.ジョハリの窓
2.若年層(3年目)までの育成のポイント
2-1.時短社員を教育係へ
2-2.入社後ギャップの解消
2-3.適度な厳しさとフォローでバランスを


 

1.若年層の特徴

1-1:今の若者が育った環境

先ほども、冒頭で少し触れましたが、今入社している若手社員はメールは見て当然。という世界の中で育ってきています。
彼ら(2020年入社)が生まれたのは、平成9年。小学校に上がる頃には既に、全国の公立小学校でインターネットが配備されており、パソコンの授業がありました。そして、中学生に上がるときには、日本でiPhoneが発売され、スマホと共に育ってきました。
このような環境のため、彼らはSNSの中の世界にいて、実際に会って声で話すようにSNSツールでコミュニケーションをとってきた世代なのです。

1-2:マズローの5段階説

よく、働く人のメンタリティなどを説明する際に、「マズローの5段階説」を用いて説明されます。
すでにご存じとは思いますが、マズローの5段階説とは、(1)生理欲求、(2)安全欲求、(3)社会欲求、(4)承認欲求、(5)自己実現欲求の順にだんだんと欲が満たされることでさらに高次な欲求が湧いてくるというものです。

しかし、現代の日本の若者にはこれらはあてはまりません。
何故なら、モノがあふれた日本という国で生まれているため、(1)生理欲求と(2)安全欲求は基本的に満たされており、考えることもないのです。
若者たちは、(3)社会欲求(どこかに所属したい)と(4)承認欲求(誰かに認められたい)が欲求のスタートになっているのです。
この(3)社会欲求と、(4)承認欲求にSNSがぴったりはまり、この2つの欲求レベルを異常に肥大化させてしまっているのです。

その結果、現代の日本の若者は「存在を認め、必要としてくれている環境(居場所)」を求めるようになります。
その為、職場マネジメント層においては、「若年層(若手)の居場所を作り出す」ということが求められているといっても過言ではないかと思います。

1-3:ジョハリの窓

先ほどの居場所とは「ここにいてもいいんだ」と感じる居場所のことを指しており、この環境が整えば、さらに一歩踏み込んで、「どんなことも否定せずに受け止めてくれる居場所」作りに進みましょう。
少しややこしい言い方になりましたが、端的に言うと、他人の言動におびえたり、羞恥心を感じるのではなく、自分自身をさらけ出すことのできる環境や関係のことです。
これは、「心理的安全」という心理学の考え方で、グーグル社が、「心理的安全性はチームが成功に向かうために最も重要なものである」と発表したことで広まりました。
この心理的安全に近づくためのコミュニケーション理論をご紹介します。
それは「ジョハリの窓」というもので、人には4つの窓があり、それぞれ「解放の窓」「盲点の窓」「秘密の窓」「未知の窓」といい、親密になるには「盲点の窓」と「秘密の窓」が重要になります。

この「盲点の窓」を刺激してあげる(本人が気付いていない、ちょっとした長所を見つけてあげる)ことで、若者は自分の思っていなかったことが職場で発見できた。と感じ、それが承認欲求の充足につながります。
すると、承認を受けたことに安心感を感じ、閉じられていた「秘密の窓」が開きます。
そこで上司との秘密の共有がなされ、心理的安全が作られていくのです。

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2.若年層(3年目)までの育成のポイント

ここまでの特徴を踏まえたうえで、具体的な育成の3つのポイントをお伝えしていきたいと思います。

2-1:時短社員を教育係へ

一般的に新入社員の教育担当は入社2年目の先輩社員が行います。これをチューター制度やブラザー・シスター制度と呼び、年齢が近く話しやすい先輩を置くことで新入社員の悩みの解決を図り、退職に歯止めをかける企業が増えてきました。
ただ、入社2年目はちょうど仕事を覚えてきた時期で、自らの業務で余裕がない状態で後輩指導をしてしまうことも少なくありません。中には、キャパシティを超えてしまい、通常業務に支障をきたしてしまうこともあるのです。

そこで、時短社員を育成担当にすることをおすすめしております。
時短社員は時間の制約があるため育成には適さないといわれています。しかし、短時間労働だからこそ仕事の見極めが上手く、新入社員にも適切に割り振りや教育を実施できます。
2.3年目の先輩社員がマンツーマンで教えていても、新入社員のスキルが十分に養われず、自立することはできません。そこで長年経験を積んだ時短社員が育成を担当すると効果的でしょう。

 

2-2:入社後ギャップの解消

入社後ギャップとは、内定者が入社前に思い描いていた会社のイメージと入社後の現実との間に差を感じることです。
多くの企業の中から選び抜いた会社に面接を申し込むのですから、内定者は少なからずその会社に魅力を感じているはずです。
しかし、実際に入社してみると業務内容や待遇などイメージしていたものと全く異なるというケースもあると思います。

「思っていたより良かった」場合は問題ありませんが、逆にマイナス面が大きく、「こんなはずじゃなかった」と失望してしまうと、最悪の場合、入社早々に退職してしまいます。
人事担当者は入社後のネガティブギャップを最小化するためにも、適切なフォローを行う必要があるのです。
そのフォローとして有効なのが内定者研修です。
同じ内定者同士を集める内定者研修を実施して、グループワークやeラーニングで基本的なビジネスマナーやスキルを習得できます。
また、研修を通じて内定者同士の良好な関係を構築させることで、ヨコのつながりを感じ、新しい環境でのモチベーションもアップにつながります。

 

2-3:適度な厳しさとフォローでバランスを

業務中などに叱る場合は注意が必要です。それは「叱る(注意する)基準」をブレさせないようにするということです。
叱る際のルールが気分によって微妙に変わる人が実は多く、これが若者が理不尽と感じる理由にもなっています。
若手には明確なイエローカードの基準を示してあげなければいけません。

しかし、ダメ出しばかりになると、委縮してしまい、心理的安全は担保されなくなり、成功からほど遠いチームになっていってしまいます。
若手に叱ってはいけないのか、というとそんなことはなく、叱らなければいけないときはしっかり叱るようにします。
しかし、その叱る際に、フォローを付け加えると心理的安全性を確保したまま指導、注意することができます。
(例:(資料の)提出期限が過ぎているぞ。期限内に出さないとだめじゃないか。内容はしっかりしたものができているのにもったいないぞ。)

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今回は若年層(若手社員)の特徴、育成のポイントについて本稿を書きました。
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本記事が皆さまのご参考になれば幸いです。

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