人事評価制度を使って管理者を育成する方法

「人事制度を導入したいが、うちは管理者(評価者)が育っていないので難しい・・・。」

人事制度のご相談をしていると、このようなお悩みを聞く機会が多くあります。まったく、その通りだと思います。人事評価制度を運用していくときのキーマンは、「管理者(評価者)」です。いわゆる中間管理職といってもいいかと思います。

「管理者(評価者)」が、人事制度を理解せず、「会社のルールだから、やっているだけだ。」と考えていると、その人事制度はただの形式主義になって、マネジメントに何の効果もない、無意味な作業となってしまいます。そのような形式主義になってしまった人事評価制度は、さっさと止めてしまった方がいい。時間というコストを浪費しているだけだからです。

人事評価制度は、マネジメントの課題に効かなければ意味がないと思いますし、人事評価制度は、マネジメントの課題に貢献するツールだと思います。

ツールは、使う者によって有効にもなり無効にもなる。
どんなに鋭く切れる包丁を持っていても、料理の仕方を知らなければ、包丁を持っている意味がない。もっと言えば、「自分は料理人である」という自覚がなければ、料理をしようとも思わない・・・。

この例えを、「人事制度における管理者」に当てはめてみると、「管理者としての役割」を認識していなければ、人事評価をしている意味はないし、さらに「管理者としての自覚」がなければ、そもそも人事制度を導入する必要性はない。となると思います。

マネジメントに効く人事評価制度を運用するためには、管理者(評価者)の「管理者としての自覚」と「管理者としての役割の認識」が必要であると考えます。

<目 次>
1.管理者としての責任と権限の自覚
2.参画させ、当事者意識を持たせる
3. 権威を活用する
4.まとめ


1.管理者としての責任と権限の自覚

人事評価制度を考えるときに、「にわとりと卵」問題にぶち当たる時があります。つまり、「人事評価制度を作る」のが先か、「管理者を育てるのが先か」です。
前者は、先にルールを作ってから、その枠に当て込む形で育成していく方法で、後者は、育成してからルールの中に入れる方法です。
これに関しては、どちらもメリット・デメリットがあるし、是々非々ではありません。
しかし、人事制度をマネジメントのツールとして考えると、前者の方「先にルールを作ってから育成しいく方法」の方が合っているのではないかと思います。
マネジメントは、時間蝉≒コストだからです。後者「育成してからルールの中に入れる」方法は、どこまでいったらゴールかわからないため時間がかかります。やはり、マネジメントを前提にした場合には、「やってから、修正していく」方法の方が、効率的です。そういう意味で、人事評価制度を、まず実践することは、管理者の育成には大きく貢献します。
自分の評価が、部下の賃金や賞与の処遇に反映し、部下の生活そのものに影響を与え、さらに部下が成長しなければ、自部門の付加価値を上げることができないため自分の評価に影響するという事実に直面するからです。この事実があるからこそ、「管理者としての責任の自覚」が醸成されます。

2.参画させ、当事者意識を持たせる

人事評価制度は、その名の通り「制度」ですので、ルールでありロジックです。
「ルールが新しく設定されました。これがこのロジックです」と言われても、従業員は「ああ~そうですか・・・。」と受け身になるでしょう。
受け身では、人事評価制度はうまく回りませんし、マネジメントに効かないただの作業になります。
人は「受け身」にならないためにはどうすればいいのか?
当たりませのことですが、「参画」させることです。人事評価制度でいえば、制度の構築に参画させるということです。人事評価制度は、様々なパターンがありますし、考え方があります。もっといえば、人事評価は、組織のメッセージですし、組織の価値観が反映します。その組織のメッセージづくりを、管理者が参画して作っていく。そして自らが作ったものに対しては、嫌ないい方かもしれませんが、NOとは言えない。人事評価項目の策定に管理者を参画させることで、人事評価制度を「自らの制度」であるという当事者意識を醸成することができます。結果として、評価について能動的に関わるようになると思います。

3. 権威を活用する

人事評価制度は、あくまでもマネジメントのツールですが、会計や労務などのツールと違う部分があります。「人間関係」が影響する。ということです。
特に評価がテキストによる評価(定性評価)の場合には、部下の性格や管理者自身のガバナンスの強さ、さらには組織内の人間関係も、評価に影響してきます。
評価制度を作っていくときに、その「人間関係」に引っ張られすぎて、人事制度の目的たる「マネジメントに効く」を忘れてしまうことがあってはなりません。
しかし、このバイアス(人間関係をよくしたい)を払拭するのは困難です。*かくいう私もそうです。
そのバイアスに対して効果的なのが、権威だと思います。
権威は正当性です。バイアスによる歪みを、本来の方向性へ軌道修正させることができます。

4.まとめ

私共は人事コンサルタントをしています。人事コンサルタントが日々現場で試行錯誤をしている経験をもとに考えたことを書かせていただきました。最後の「権威を活用する」については、(誤解を恐れずいえば)人事コンサルタントというのも、ひとつの権威だと思います。権威の背景は、様々な業種・業態・規模などの会社とお付き合いしてきた経験ということになるかもしれません。
また、本音で話すことができるクライアントからは、コンサルタントを活用する本質は、そこにあるというお話も伺います。
本音ベースでお話をさせていただきました。「マネジメントに効く」人事制度構築のご参考になれば幸いです。

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本記事が皆様の人事制度構築に参考になれば幸いです。

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